手足のイボ(尋常性疣贅)

尋常性疣贅とは

 尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい)はヒトパピローマウイルス(HPV)の感染により生じます。

 感染は接触感染により、皮膚に微小なキズがあったときHPVが体内に侵入して皮膚の角化細胞に感染を生じます。HPVに感染した角化細胞は分裂速度が速まるため、その部分の表皮が肥厚してイボになります。子宮頸がんもHPVが原因の病気として知られていますが、尋常性疣贅とはHPVの種類が異なります。

 感染の機会は、大勢のヒトが裸足で行動するプールサイドや公衆浴場の脱衣所などが多く、家族内では皮膚の直接の接触の他、共用しているタオルや風呂場の足拭きなどを介しての感染もあります。

正常な皮膚とイボ、タコ、ウオノメの違い

【正常な皮膚】

正常な皮膚は外側から表皮、真皮、皮下脂肪の層に分かれています。(図は表皮と真皮のみ示しています)
表皮の最外層は角質層で覆われています。

【イボ】

 イボは表皮が肥厚する疾患です。表皮と真皮が互い違いに入り組んだ状態(乳頭腫状)に肥厚するので、表面をメスで削っていくと真皮部分が露出して点状に出血が見られるのが特徴です。

【タコ】

 タコ(胼胝腫)とウオノメ(鶏眼)は表皮の角質層が肥厚する疾患です。タコは比較的広い範囲に角質層の肥厚を生じているため、皮膚が硬くなっているだけであまり痛くありません。

【ウオノメ】

ウオノメは角質層がくさび状に肥厚しているため、当たると痛みがあります。
タコとウオノメはその部分の皮膚が圧迫や摩擦を受けてできるものなので、感染することはありません。

実際の症状(イボとタコ、ウオノメの比較)

【イボ】
 
【タコ】
 
【ウオノメ】

イボを放置すると?

 最初のうちは小さかったイボも、感染した局所でイボのウイルスが増殖を続け周囲の角化細胞に感染を拡げて行くため、徐々に大きさが増してきます。やがて離れた場所にも飛び火して、イボの数は増加して行きます。

 イボは小さく、数が少ないうちは比較的短期間で治癒させることができますが、大型のものや多発したものは難治性となり、他人への感染源としても問題になります。できるだけ早期に、きちんと治したほうが良いでしょう。

 体にイボのウイルスに対する抗体ができると、イボが自然に治ることがあります。しかし、抗体ができるまでの期間は個人差が大きく、放置していると何年たってもイボが治らない人もいます。しかも、その間イボは増え続け、外見上の問題とともに、周囲の人へ感染させるリスクも続くことになります。

当院で行っている治療

液体窒素療法

 簡便でもっとも一般的な治療法です。超低温の液体窒素でイボを凍結して壊死させる治療法です。凍結した部分は2週間前後でかさぶたになり、削り取れるようになります。1回の治療で治るわけではありませんが、2週間に1回のペースで繰り返すことで徐々にイボは小さくなって行きます。ただし、しっかりと効果を出すためには痛みを我慢して強く治療する必要が有り、小さなお子様や痛みが苦手な人には不向きな治療法です。強く治療した時に血豆ができて、治療後の痛みが長引くことがあります。血豆はつぶさないようにして下さい。

モノクロール酢酸

 モノクロール酢酸という強力な酸を用いたイボの治療法です。イボにモノクロール酢酸(水溶液)を塗り、その上にスピール膏を貼り付けます。そのまま患部を濡らさないようにして8時間程度スピール膏を貼ったままにしておくとモノクロール酢酸がイボの深部に浸透します。週1回ペースでこの処置を繰り返すと、やがてイボはかさぶたになって剥がれ落ちてきます。あまり痛みのない(皮膚が薄い部分ではヒリヒリと痛みを感じることがあります)方法ですので、小さなお子様に適した治療法です。顔面や腕の内側など皮膚が薄い場所には実施できません。

グルタルアルデヒド

 グルタルアルデヒド(ステリハイド)という殺菌消毒薬をイボに塗る治療法です。これ単独での治療効果は弱いのですが、他の治療法と併用すると効果があります。液体の薬を1日1回綿棒で患部に塗って、ドライヤーの冷風で乾かします。薬を塗った部分が茶色く染色されることと、表面が乾燥してひび割れを生じやすいのが欠点です。保険適応はありません。

ヨクイニン内服

 漢方のはと麦の内服薬です。はと麦にはイボのウイルスに対する免疫力を高める作用があります。単独での治療効果は弱いのですが、副作用も少ないので他の治療法と組み合わせて行います。

スピール膏

 スピール膏には肥厚した角質を溶かす作用があります。スピール膏を長時間貼り続けることでイボの表面を溶かしてイボを小さくする効果があります。単独では効果が弱いため、他の治療法の補助的に行います。

炭酸ガスレーザー

 レーザーでイボ組織を蒸発させて除去する治療法です。液体窒素療法で効果が見られない、大型の難治性イボに対して行うことがあります。局所麻酔を要する処置で、治療後1~2週間はガーゼを当てる必要がありますので、複数箇所を同時に治療するのには適しません。

 いずれの治療法も、1回の治療でイボが治るわけではありません。特に多発性のイボや大型のイボの治療は繰り返し、根気よく続ける必要があります。イボは治療に時間がかかりますが、必ず治る病気です。あきらめないで、定期的に治療を続けるようにして下さい。

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