一言でシミといっても…

一言でシミといっても、原因や症状の異なるさまざまなタイプのものが含まれています。シミのタイプによって適している治療法は異なりますので、シミの治療でもっとも大切なことは、どのようなタイプであるかの診断です。
自己判断しないで、経験豊富な医師にご相談ください。

一般的に、シミとは「皮膚の色調の変化、特に褐色または黒色への変化」を表現する言葉として用いられています。そこには大きさや、形の概念は含まれません。つまり、大きいものも、小さいものも、まあるい物も、そうじゃない物も、褐色または黒色への色調の変化を伴う物は、すべてシミと表現されているのです。
そのような訳ですから、「シミ」という言葉からイメージする症状は人によってまったく異なっている場合もあります。

つまり、「一言でシミといっても、その中には様々な病態がごちゃ混ぜになっている」のです。

 

では、一般にシミと呼ばれるものにはどんな病態が含まれているのでしょうか?

ざっと病名(病気というには疑問のあるものも含まれますが…)を挙げてみましょう。
• 老人性色素斑
• 脂漏性角化症
光線性花弁状色素斑
肝斑
雀卵斑
• 扁平母斑
太田母斑
後天性真皮メラノサイトーシス(ADM)
炎症後色素沈着
平坦な母斑細胞母斑(ほくろ)
摩擦黒皮症(ナイロンタオル皮膚炎)
外傷性刺青
など
以下にタイプ別の説明を加えます。
 

老人性色素斑

顔面にできやすい、もっとも代表的なシミです。

加齢に伴うケラチノサイト(表皮細胞)の機能低下が原因。メラニン色素の産生が亢進するとともに、表皮ターンオーバーの遅延により表皮内にメラニン色素が貯留した状態です。

病名に「老人性…」と付いていますが、日焼けすることが多いと若い人にも見られる症状です。

小さな円形または楕円形の薄茶色のシミとして現れ、徐々に大きく、色が濃くなってきます。

適した治療法

Qスイッチ・アレキサンドライトレーザー、ハイドロキノンを代表とする塗り薬、広範囲に多発しているものに対してはIPL、補助的に飲み薬、など

脂漏性角化症(SK)

鼻にできた隆起の
目立たないSK

 

髪の生え際にできた、
少し隆起したSK

 

手の甲に
たくさんできているSK

老人性疣贅(ろうじんせいゆうぜい)ともいいます。体中のどこにでもできる可能性があります。

病気のメカニズムは前項の老人性色素斑と同様に、加齢に伴うケラチノサイト(表皮細胞)の機能低下が原因。表皮ターンオーバーの遅延により、古くなったケラチノサイトが堆積して表皮の厚みが増した状態です。

シミが少し盛り上がったように見えるものですが、隆起の程度はさまざまで、ほんのわずかに厚みが増した程度のものから、イボのように大きく出っ張ったものまであります。また、色の黒いもの、褐色のもの、少し赤くなったもの、肌色のものなど見た目の症状はさまざまです。

イボ状に盛り上がったものが「シミ」と呼ばれることはありませんが、隆起の少ないものはシミの範疇に入ります。

適した治療法

炭酸ガスレーザー、液体窒素、など

光線性花弁状色素斑

肩にたくさんできている 花弁状色素斑

両肩から背中に多発した
花弁状色素斑

肩から背中にかけてたくさんできてくるシミです。

強い日焼けがきっかけとなって、メラニン色素が過剰に作られる状態が続いてしまうことが原因。

色白の人が海水浴などで急に日焼けした後、日焼けの症状が落ち着いてからできてきます。肩から背中にかけて、大きさが数mm~1 cm程度の、花びらあるいは金平糖のような形(カラスの足跡状のものもあります))をした茶色いシミです。

適した治療法

Qスイッチ・アレキサンドライトレーザー
(液体窒素が有効な場合もあります)

肝斑

典型的な肝斑の症状

 

おでこや鼻の下にも
左右対称性にシミができます

 

稀に男性にも
肝斑を生じます

30~40代の女性に多く見られるシミです。

ホルモンバランスの異常によりメラニン細胞の活性が高まってメラニン色素が過剰に作られてしまうことが原因。

顔面(頬骨に沿ってできることが多い)に左右対称性に現れる、周囲との境界がはっきりとしたシミです。紫外線の影響で色が濃くなるので、夏に悪化して、冬には症状が軽くなる傾向があります。ホルモンバランスが急激に変化するため、妊娠・出産をきっかけに症状が現われることもあります。その他にも、ホルモンバランスに影響を与える過労やストレス、ある種の薬剤(経口避妊薬、抗てんかん薬などの一部)も症状を悪化させる要因です。

適した治療法

トラネキサム酸を代表とする飲み薬(L-システイン、ビタミンC、ビタミンE、グルタチオンなども)
ハイドロキノンを代表とする塗り薬(ビタミンC誘導体、レチノイン酸なども)、など
(治療によって色が薄くなっても、上記のような増悪要因が加わると再発します。)

雀卵斑(そばかす)

遺伝的な体質に基づいた俗にいう「そばかす」のこと。

遺伝的な要因によりメラニン細胞が活性化して、メラニン色素が過剰に作られることが原因。

5歳ぐらいから、鼻のつけ根~両頬にかけて直径数ミリ程度の小さなシミがたくさんできてきて、年齢とともに増加してきます。思春期前後に色が濃く目立つようになり、二十歳を過ぎると徐々に色は薄く目立たなくなっていきます。紫外線の影響で色は濃くなるので、夏になると色が濃く目立ってきます。日焼けによって悪化しますので、紫外線対策は重要です。

適した治療法

Qスイッチ・アレキサンドライトレーザー、IPL、ハイドロキノンを代表とする塗り薬、など
(ただし、治療効果は一時的で再発することが少なくありません。)

扁平母斑

右肩から背中にかけて
生じた大きな扁平母斑

 

多毛を伴う扁平母斑

 

手の甲にできた扁平母斑

薄い茶色をしたアザの一種です。

生まれつき(先天性)のものと、思春期前後から目立ってくる(遅発性)ものとがあります。遅発性のものは肩や胸、腰などにできることが多く、その部分の毛が濃く(多毛に)なっていることもあります。

日本人の場合、10人に1人位は体のどこかにこのアザができていると言われます。小さなものや、色が薄いものは本人が気づかないことが多いようです。

適した治療法

Qスイッチ・アレキサンドライトレーザー
(ただし、再発したり、逆に色が濃くなってしまう場合もありますので、治療前によくカウンセリングをお受け下さい。)

太田母斑

思春期頃に目立ってくる、青黒い色をしたアザの一種です。

多くのシミは表皮のメラニン色素が増加した状態ですが、この太田母斑と下記の後天性真皮メラノサイトーシスとは例外的に、真皮内のメラニン細胞が増殖した状態です。

生まれつきで成長とともに色が濃くなっていくタイプ(早発性)と、思春期以降に症状が現れるタイプ(遅発性)のものがあります。
黄色人種に多いタイプのシミです。

目の近くにできたものは、目の下のクマと間違われることもあります。

適した治療法

Qスイッチ・アレキサンドライトレーザー
(繰り返しレーザー照射を行う必要がありますが、保険適応があるのは2回目までです。以後は自費診療となります。)

後天性真皮メラノサイトーシス(遅発性両側性太田母斑様色素斑)

両側頬っぺたの外側に
生じるのが特徴

 

おでこに生じる
こともあります

 

鼻に生じることもあります

20代後半以降になってから、女性の両頬部にたくさんできてくる、青黒色または褐色の点状のシミです。

多くのシミは表皮のメラニン色素が増加した状態ですが、この後天性真皮メラノサイトーシスと上記の太田母斑とは例外的に、真皮内のメラニン細胞が増殖した状態です。

太田母斑と同様、黄色人種に多いタイプのシミです。
症状が肝斑や雀卵斑と似ている場合がありますが治療法は異なりますので、見た目だけでこれらの疾患と区別が困難な場合には皮膚生検(皮膚の一部分を取って顕微鏡で見る検査)が必要になることがあります。

適した治療法

Qスイッチ・アレキサンドライトレーザー
(繰り返しレーザー照射を行う必要がありますが、保険適応があるのは2回目までです。以後は自費診療となります。)

炎症後色素沈着

湿布かぶれの後で生じた
炎症後色素沈着

首の炎症後色素沈着
(アトピー性皮膚炎の
患者さん)

何かにひどくかぶれた後や、やけどをした後に茶色いシミが残ることがありますが、そのような症状を炎症後色素沈着といいます。

 

炎症後色素沈着は他のシミと違って時間の経過とともに自然に色が消えていきますので、通常は特別な治療を必要としません。しかし、症状が強いと色が消えるのに数ヶ月以上も時間がかかってしまったり、色が消えずに残ってしまう場合もありますので、もとの炎症が強いため炎症後色素沈着が重症化しそうな時には、予防的に治療を行うこともあります。

適した治療法

ビタミンCを代表とする飲み薬(L-システイン、ビタミンE、グルタチオンなども)
ハイドロキノンを代表とする塗り薬(ビタミンC誘導体、レチノイン酸なども)、
ケミカルピーリング、など
(一般的に炎症後色素沈着に対してレーザー治療を行うことはありませんが、例外的に、色素沈着が真皮に及ぶ場合には通常の治療に反応しないので、Qスイッチ・アレキサンドライトレーザーを行う場合もあります。

平坦な母斑細胞母斑(ほくろ)

顔面に多発する
平坦なほくろ

腕に多発する
平坦なほくろ

ほくろはメラニン細胞の良性腫瘍で、徐々に大きく盛り上がってくることが多いので、病態はシミと異なります。しかし、小さなほくろや盛り上がりのない平坦なほくろのことを「シミ」と表現される方もありますので、ここではシミに含めておきます。

母斑細胞(メラニン細胞が変化したもの)が増殖してくる皮膚良性腫瘍の一種です。

急に大きくなってきたほくろや、形が歪なもの、色の濃淡が目立つもの、脆くて出血しやすいもの、手の平や足の裏にできたもの、などは悪性黒色腫(メラノーマ)の疑いがありますので、皮膚科専門医の診断をお受け下さい。

適した治療法

手術、炭酸ガスレーザー、Qスイッチ・アレキサンドライトレーザー
(ほくろの状態によって適した治療法は異なります。また、手術以外の方法ではほくろを完全に除去することはできず、再発する可能性が残ります。)

摩擦黒皮症(ナイロンタオル皮膚炎)

お風呂で体を洗う時に、ナイロンタオル(化繊でできたアカすりタオルもしくは泡立ちタオル)でゴシゴシと擦っていると、背骨や肩甲骨の上の部分の皮膚に茶色~黒色の色素沈着を生じてきます。

摩擦による機械的刺激やそれにより生じる炎症が原因となって、表皮内のメラニン色素が真皮に落ち込んで沈着したもの。

ナイロンタオルの使用を中止すれば自然に回復しますが、色が消えるまでに数ヶ月~数年もかかることがあります。早く色が消えることを期待して、次のような治療を行う場合もあります。

適した治療法

ビタミンCを代表とする飲み薬(L-システイン、ビタミンE、グルタチオンなども)
ハイドロキノンを代表とする塗り薬(ビタミンC誘導体、レチノイン酸なども)、
ケミカルピーリング、など

外傷性刺青

すりむきキズをしたときに、ガラスの破片や砂利などの小さな異物がキズの中に入りこんで、キズが治った後に入れ墨(刺青)をしたような色(黒、青、うす茶色)が残ってしまった状態です。
メラニン色素が増えた状態でないのでシミとは異なりますが、「けがの痕にシミができた」と言って来院される方が多いので、ここではシミの範疇に入れておきます。

「刺青(入れ墨)」は人工的に真皮に炭素等の異物を沈着させたものですが、けがによって真皮内に異物が沈着した状態になってしまったものが外傷性刺青です。

適した治療法

Qスイッチ・アレキサンドライトレーザー

(沈着している異物の種類によって治療効果が見られないこともあります。)

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